映画「春の雪」と映画「フランティック」
前から観たかった「春の雪」を昨晩みることができた。撮影が素晴らしい。ほとんどどのカットも緩やかな移動撮影で撮られている。レールを敷き、撮ってる感じ。撮影は大変だったろうなあ。日本映画ではあまりみられないコッテリとした色彩の濃度がある。
梅酒でいえば、水でうすめずに飲んだよう。見所は随所にある。一番凄いのは「大楠道代」の演じるあるシーン。(内緒にしておきます。)
この一見美しい映像の向うに広がる魂の腐敗・退廃、そして死。美しい悲恋を装いつつも、やはりMISHIMA(三島由紀夫)のことを、何度も想起してしまった。
DVDの見方としては、正対してみるより、ながしっぱなしにして観るの、良し。移動撮影で描かれるので、悠長に感じられる。悪い意味ではなく、鑑賞の緊張の持続はもたない。
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全く「春の雪」とは関係のないロマン・ポランスキーの「フランティック」。ハリソン・フォード特集で、今週BSで見た。
恐るべし、ポランスキー。
最初の方のシークエンスで、ハリソン・フォードがシャワーを浴びているシーンがある。シャワールームの中から、ハリソン・フォードを撮りつつ、その奥に縦の構図で彼の妻が話してる様子。シャワーの音で声は聞こえない。それをゆっくり左にキャメラ移動しながら描く。たった1カット。恐ろしいドラマの転換点がたった1カットで観客のこころに送り込まれる。
潜在意識に刷り込まれるような異国(パリ)の孤独。何度か出てくる不思議な清掃車と清掃員の後姿にも投影されている。この「フランティック」、最後にも清掃車がでてくる。何も論理的意味はないのに、映像(イメージ)の世界の言語を、ポランスキーは操っている。
この全く関係のない映画に共通してあるのは、サンサシオン・・・何と言おうか、ある雰囲気・感情のための物語という点。「春の雪」は耽美な死への憧れ、「フランティック」は異邦人の孤独。そういったものを、僕は感じた。
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コメント
はじめまして、私のブログにコメントありがとうございます(^.^)。
「春の雪」は映画館で見ました。
情景描写がとても美しく、とくに清さま(笑)の夢のシーンがきれいでぞくっとしました。
欲を言えば、竹内結子がいまいち着物の着こなしができていない・・ように見えるのが残念でしたが。
きれいだからOKにしちゃいましょう(^^♪。
今日のハリソンさんも楽しみです(^.^)。
投稿: ツッキー | 2006年5月27日 (土) 10時00分
ツッキーさん
コメント、ありがとうございます。
「清さま」・・・ですか、非常にわかります。彼の「夢日記」は売れると思います。それにしても、あのパジャマの色(確か濃い赤)はすごかったなあ。
今夜の「今そこにある危機」は、僕も見ようと思います。“知り合い”のハリー君が主役ですから。
投稿: チャーリー | 2006年5月27日 (土) 11時13分