映画「恋愛小説家」のジャック・ニコルソンは
この映画のとき、60歳だったと後で知った。相変わらず、怪演・怪優、ニコルソン!
この役どころ、本当に嫌味だけれど、こころの奥底では寂しいという難役。ウエイトレス役のヘレン・ハントの給仕でなくては食事ができない位、社会的に不適応な、しかし売れっ子の恋愛小説家である。その60歳の犬も食わない中年男が坊やに見えたりするから不思議なものだ。揺れ動く恋心が、表情の奥からにじみ出てくる辺り、おおいに笑わせてもらった。
小説家のくせに、全く会話のピントが外れている辺りが、おかしい。会話が成立していない。女心というもの、いや人のこころというものが判っていないのだ。だからコメディになる。よく恋愛小説家でいられるね、というアイロニー。
一方のヘレン・ハントは、美人ではないけれど、人間的に魅力があって、特に病弱の男の子を守りながら一人で頑張って生きてきた。支えてくれる男がほしいと吐露するあたりの涙は、こころを打つ。絶対に、J・ニコルソン(メルビン:小説家)とベッドだけは共にしたくない、と意思表明する、「Never! Ever!」の強い口調に、思わずこちらも頷いてしまった。
しかし、恋は異なもの。そういう二人に感情の交流が始まって・・・。こころの優しさや共感が少しずつ、ジャックに人を思いやって生きていくことの大切さ、素晴らしさを教えていく。ああ、この台詞で二人のこころに橋が架かった。あっ、せっかく架かった橋があっという間に壊れた・・・そういう局面が交互にきて、最後はハッピーエンドで終わる。
「あなたのために、いい人間になろうと思った」・・・その口説きが決まるのは、結局、愛はゲームじゃなくて生きることだからで。皺の分だけ、ニコルソンは魅力的だ。
この映画は、60歳の男が愛によって人間的な成長をとげたという物語。
「愛の流刑地」のような“ひとりよがり”なお話に、J・ニコルソンははたして乗るだろうか?
| 固定リンク
コメント
「恋人までの距離」にコメントいただきました、n.oです。 <(__)>
↑三部作!いいですねぇ。更に、歳を重ねると、あの時点での結末がわからないだけに、想像もつかないっ!
ジャック・ニコルソンの「恋愛適齢期」も好きですよ、私。ご覧になりました?
では。
投稿: n.o | 2006年5月24日 (水) 21時37分