ニコラス・ケイジ 「ロード・オブ・ウォー」&「ウェザーマン」
ニコラス・ケイジは好きな役者だ。伯父にフランシス・コッポラを持ち芸能一家に育ったという。どことなく育ちのいい人。『リービング・ラスベガス』LEAVING LAS VEGAS(1995)でアカデミー主演男優賞を受賞。彼の気弱な優しさが壮絶なアル中の演技の中ににじんでた。際物として好きなのはご贔屓ブライアン・デ・パルマの「スネーク・アイズ」SNAKE EYES(1998)。このニコラスははったりとオーヴァー・アクションで怪演。やくざなニコラス刑事。(←刑事・・・ケイジ、シャレのつもり)
本題に入る。
●新作『LORD OF WAR』:武器商人になってしまったまっとうな中年役。当惑してるニコラスの表情がおかしい。事実に即した死の商人がニコラスの演技で批評性を持つ。冒頭のタイトルバックで銃弾一個の製造過程から輸出され銃口から発射され黒人の少年の頭を打ち抜くまでの描写は秀逸。批評性がある映画である。美しいキャメラ・ワーク。死の商人の活躍を知る情報映画。戦車何台にオマケ1台という世界ー巨万の富が手に入る。現代版不思議の国のケイジ。
●新作『The Weather Man』邦題ー「ニコラス・ケイジのウェザーマン」。TVのお天気おじさんのケイジ。これはひょっとして傑作。まるで、村上春樹の小説世界のようだ。ニコラスは現実世界と微妙なずれを日常で感じてる。中年の彷徨い。市川準監督の「トニー滝谷」と妙な一致がある。
幸せな中の空虚感。幸せって何?という問いかけが根底に流れてる。
ニコラス・ケイジは何を演じてもケイジ。現実に少し違和感を持ちながら生きてる中年男を演じさせると、本当にうまい。クレイジーだけれど許してしまえるのは、ニコラスの育ちの良さからくるものだと、僕は思ってる。
武器商人もお天気おじさんも似たように見せてしまうのは、ニコラス・ケイジという役者の持っている批評性だと思う。
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コメント
『ロード・オブ・ウォー』は私も映画館で観ましたよ^^
冒頭の銃弾の一段の流れはすごいなあ、と私も思いました。大量生産されていく様が無感情でそれが余計に強く訴えてきますよね。
ニコラス・ケイジも役にぴったり。あの人は雰囲気があります。
この映画を観て、観念的にだけじゃなく平和を願ったのを覚えてます。戦争はいろんなところに悲しみを撒くだけですもんね。
投稿: とーこ | 2006年6月26日 (月) 17時12分
ニコラス・ケイジ扮する武器商人の台詞に「自分の一年分が合衆国大統領の一日分の武器輸出量というようなくだりがあって、ブラック・コメディ的でしたね。
第三世界では十代の前半の兵士が多くて問題になっているそうです。
お金儲けする一部の白人がいる一方で、有色人種の命が失われていくのでは、やりきれません。
でもこういうことに対して、日本は本当に無力のような気がします。サマワで自衛隊が何をしているのかすら、僕たちには知らされていないようですし、マスコミも知らなくていいみたいです。
何か、変ですよね。
投稿: チャーリー | 2006年6月26日 (月) 19時45分