映画「哀愁の湖」は異世界に誘う。
1945年アカデミー色彩撮影賞受賞映画として、確か川本三郎氏が紹介してた。以前から観たかった。偶然DVDで発見し、やっと観た。
テクニカラーによる色彩は、こってりと油絵の具のように盛られている。異様な美しさ。完璧な造型(女も男も)に、ふと高度なCGで造られた実写をみるようだった。
映画評論家・山田宏一氏は「光にあふれた、輝くばかりの華麗なテクニカラーによる白昼の別荘地を舞台にした犯罪メロドラマ(引用)」と評した。「ときには毒々しいばかりの、鮮烈な色彩に吸い込まれ、かき消されてしまうかのようである。(引用)」
「ジーン・ティアニーがエレクトラ・コンプレックスのように「父の面影」を見出して愛した男、コーネル・ワイルドも印象が稀薄だ。もっとも、彼女のきらめくようなグリーンの瞳でじっと見つめられたら、どんな男だって身動きできず、骨抜きにされてしまうだろう。「七つの大罪のなかでも最も罪深い」嫉妬という情念に狂った悪の華、ジーン・ティアニーの一人芝居のような悪女ぶりに圧倒されよう。銃やナイフを振り回すわけではない。兇器はただひとつ、嫉妬という名の狂気なのだ。」ー山田氏の引用が長くなったが、相当な思い入れが伺える。
今は、デジタル・アーカイブの時代。1945年の映画を完璧な状態で観れるのは、実は凄いことである。
そこには、私たちの記憶にまだ入っていない女優、男優、お話が広がる。
つまり、未来と同じ未開の大陸が広がっている。
この「哀愁の湖」は、その湖沼篇。不思議なパラレル・ワールドの世界を、最近の映画に倦んだ時には、お勧めします。
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