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2006年7月 4日 (火)

オリバー・ツイストはポランスキー

合点がいった。映画「Oliver Twist」を観て、これは7,8歳のときにユダヤ人家庭を転々としたロマン・ポランスキーの自己投影の映画である。

Photo_26 ご承知の通り、ポランスキーの両親は強制収容所に送られ、母親はアウシュビッツで亡くなっている。ひとりぼっちのロマンは逃亡生活を余儀なくされた。そんな体験が主人公に投影されていると感じたのは、主人公がどことなくポランスキーに似ているなと思ってみていたからだ。

ポランスキーにはいつも飄々としたイメージがある。ポーランドから西側に亡命し、ヨーロッパとアメリカで成功し、アメリカを追われ・・・と彼の人生は変転と不幸(両親、妻・シャロン・テート/マンソンによる虐殺)に塗れている。なのに映画出演したりする彼の雰囲気は飄々としたものが漂う。)

映画「戦場のピアニスト」で世界的な名声を博したが、彼の事を「巨匠」とか「名匠」と呼んでいるのに違和感を覚えるシネマディクトは多いのではないか。ロマン・ポランスキーは「異端」であり「鬼才」である。

鬼才がやがて名匠になる・・・なんてことはない。80億円もかけて自分自身の幼年時代をOliverに投影し未来を次世代に託す映画での遺言を試みる男は、依然「異端」であり「鬼才」である。

Oliverには無垢なものーイノセンスがある。そして泥のような世界にあっても穢れない何かーそれはシャイニングだと思うーがある。貴公子や騎士にはそれが必須だ。泥だらけになっても立ち上がった時には純白の装いでいるような気品が。

Oliverを取り巻く大人たちは皆、醜い。たった一人を除いては。その一人も見た目は醜い。人間動物園のオンパレードの感あり。もしもこの登場人物たちがロマンに係わった映画プロデューサーやハリウッドの有象無象の人物たちの似た者が配役されているとしたら、ロマンはこの映画で唯一みなに秘密にしてる事柄になる。世界でたった一人のために造られた映画が、子供たちに託すべき希望や勇気という感情を伝えるとしたら、彼は鬼才である。

僕にはオリバーの運命をかえた一人物が、だれを投影してるか判ったような気がした。

「くたばれ!ハリウッド」の著者で「ローズマリーの赤ちゃん」などをプロデュースしてポランスキーを世界のロマンにした男ーロバート・エヴァンスである。

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