靖国問題について
靖国神社は江戸時代にはなかった。(知らなかった。)幕末・維新で官軍側の戦死者を祀る東京招魂社から出発。明治天皇の思し召しによって創建。明治維新、西南戦争、日清・日露戦争、第一次世界大戦、満州事変、支那事変、大東亜戦争など国のために戦って亡くなった方(結局は戦前の陸海軍省の判断による)を祀る。戦前・戦中の国家神道の思想を受け継いできた。西郷隆盛は「逆賊」ゆえ靖国には祀られていない。西郷は愛国者ではないのか?
「靖国フェチ」や靖国に参拝しなければ愛国者ではないとする政治家は、西郷が愛国者ではないといいたいのかと逆説的に問うのは佐高信(さたか まこと)。
靖国は大日本帝国の戦争の歴史と重なってるのが問題の核心にある。246万柱の合祀には台湾や韓国の戦没者が約4万9千いる。その遺族にとっては日本国家の近代戦争を称揚する靖国に何の同意もなく合祀され合祀の取り消しを要望しても拒否されている。
◎安倍晋三氏のベストセラー『美しい国へ』では(靖国参拝について)こう述べる。
「一国の指導者が、国のために殉じた人びとに尊崇の念を表するのは、どこの国でもおこなう行為。その国の伝統や文化にのっとった祈り方があるのも、ごく自然なこと」。
ならば、ドイツの政治家がナチス・ドイツの栄光を祀る社(やしろ)を「こころの問題」として祈るのか?
「英霊」とは次の戦争のために準備された誇らしき死の約束だと江戸時代研究者・田中優子氏は述べる。
◎再び安倍氏の『美しい国へ』から(ナショナリズムについて)ー。
「自分のいのちは大切だが、ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在する。自由や民主主義をわたしたちの手で守らなければならない。わたしたちの大切な価値や理想を守ることは、郷土を守ることであり、愛しい家族を守ることでもある」。
鹿児島の知覧からは60年前に十代の少年たちが特攻した。美しい日本の風土を彼らは見納めて沖縄戦の艦砲射撃で火達磨になって死んでいった事実。
息子たちに教えてることは、自らの命を守ること。どんなことがあっても与えられた命を大切に守り抜くこと。
「いのちをなげうっても守るべき価値が存在する」などと同年代の政治家に説かれる筋合いはない。豊かな時代を生きてきた。朝鮮戦争の恩恵を受けて日本は甦ったのだ。他民族の悲劇のうえに繁栄があることを忘れてはいけない。
『美しい国へ』は4刷計27万部。創刊から丸8年を迎える文春新書の歴代最高部数を記録するという。涙と共にパンを食べた経験があれば「花より団子」の意味くらいわかる。「美しさ」よりも大切なものがこの世にはある。
歴史意識や国際感覚、教養や人生の根本原則に疑問を覚えるような政治家が国家のトップを狙うのはあやういなあ。洋の東西を問わず繰り返し繰り返し歴史でみてきたコトだから・・・。
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