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2006年9月11日 (月)

映画「天国と地獄」

久しぶりにみた。何回目もみてる。その度に発見がある。クロサワ1963年発表の骨太の娯楽サスペンス大作。児童誘拐をテーマに三船敏郎と山崎努(デビュー)の一騎打ち。ただし剣は使わない。現代劇。仲代達也が警部(善玉)で。悪役の方が似合う存在感。

とにかく面白い。クロサワの映画は情報量が多い。一画面に多人数の刑事がひしめく描写などクロサワならでは。そして後世の映画に多大な影響を与えた。『踊る大捜査線』にも。

今回みて発見したこと。三船演じる靴メーカー常務・権藤はクロサワのメタファー(暗喩)だ。三船が描く権藤は魅力的な中年男性。職人気質。叩き上げで靴をつくることにかけては余人に負けない。そして仕事を愛してる。この男の人生の危機が結果として揺るがないのも自らの仕事に対する絶対的な信頼からくる。

この「靴づくり」を「映画づくり」に置きかえれば判る。1963年は東京オリンピックの前年。オリンピックを契機にTVはカラー化が進む。映画は娯楽の王者から転落していく。クロサワと権藤は一卵性双生児。

映画の造り方がクラフツマンシップで造られてる。だから40年以上経っても充分娯楽になる。映画は博物館で楽しむものではない。いつも観客にとっては今の時間の充実のためにある。

この映画にはクロサワの辿るその後の運命が予見されてる。それは高度経済成長で日本企業が切り捨ててきた創造性。クロサワが生きにくい日本に日本は邁進した。結末はハッピーエンドのはずが、決してハッピーではない。

不思議な結末である。

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