タルコフスキーの「ノスタルジア」を観て
深夜のBS2で懐かしい映画をみた。「母の思い出に捧げる」・・・アンドレイ・タルコフスキーの献辞が映画の最後に表れる。タルコフスキーが亡くなって久しい。この世界に最も大切な一本のロウソクがかき消されてしまったような気分を思い出す。
そう。タルコフスキーはもう新しい映画を撮ることはない・・・。
彼の映画をみると映画という概念が拡がる。永らくタルコフスキーの映画から離れてた。魂の問題とは余りにも関係ない映画を映画と思って、たくさん観てきた。つまりちょっと堕落してた。
タルコフスキーの映画をみると、映画は魂の芸術だと告げられてる気がする。
国家を追われ、異国の地(確かパリ)で客死したロシア人芸術家。過酷な運命の中で造られた限られた映画は、今も古びていない。
霧に水、炎、雪・・・自然界の揺らぎが映像の大切な構成要素となっている。宗教画をみてる気持ちにさせる。世界を救おうとする気持ちなど狂った思いにみえてしまう現代にあって、「祈り」という行為をこれ程敬虔に描いた映画を、ボクは知らない。
何回も観た映画だけれど、夜中に起きて、最後のシークエンスを観ていて、ボクは心うたれた。心が浄化される思いを味わった。
亡くなったタルコフスキーの祈りが映像を通じて私たちにバトンとして渡される気がした。
そのバトンを次の世代に渡す営みを、ボクはしたいと思った。
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