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2008年8月23日 (土)

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

20世紀初頭の“石油王”を描いたポール・トーマス・アンダーソン監督作品をDVDで観た。

主役を演じるダニエル・レイ・ルイスの怪演には圧倒された。

この主人公は、確かに強欲であり、憎悪にまみれ、欲望の権化のようである。しかしあまりに複雑な人間存在であるために、最後まで目を離すことができない一種の“魅力”を放ってる。

それは重労働に打ち込む姿や、幼い息子を可愛がる姿、燃え盛る炎に魅入る表情や、疑惑を押し殺し凝視する姿に、深い人間的真実が味わえるからだろう。

映像美、そして音楽も含めた音響デザインの素晴らしさも、深く印象に残る。

何か重いもの、語りたい何かが詰まってる。

この主人公ダニエルは、一体何者なのか?

謎が残る。

アメリカそのものではないか。

アメリカン・ドリーム。貧困。労働。マネー・マネー・マネー。いつしか得た巨万の富。アルコール依存症。

石油と血が、同じような質感で描かれる。

オイルを巡る戦争。パイプラインの利権も紛争を引き起こすらしい。

そういう意味では、20世紀初頭のドラマという設定は、20世紀が石油と戦争の世紀であったことを考えると、旧約聖書のドラマにも思えてくる。

飽くなき欲望の裏には、憎悪と悲哀が潜んでる。

強欲のラット・レースに終わりなく、安息もまたない。

マネーは権力そのものである。

信仰心なく、人間の善なる魂もまた、オイルにまみれたのだろうか。

いろいろな事を想起した。

アメリカの世紀は、終わった・・・」。

そうポール・トーマス・アンダーソンは、語りたかったのではないか?

もしも監督に会う機会があったら、それを訊ねてみたい。

アメリカはかつて「幸せのビジネスモデル」であるはずだった。

TVを通じて、それは布教された。

そのアメリカは、これからも「幸せのビジネスモデル」であり続けるだろうか?

映画の最後は、とても暗示的な終わり方をした。

苦味もまた、味わいのひとつであるのだろう。

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