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2008年12月 4日 (木)

「ソロスは警告する」(講談社)

「伝説の投資家」と呼ばれるジョージ・ソロス氏は、この著書の邦題を知って、「私は警告など、しておらんがね・・・」と呟くのを想像してみる。

原題は以下の通りである。

The New Paradigm for Financial Markets

「金融マーケットの新パラダイム」と訳せばいいだろうか。

穏やかなタイトルである。

現在七十八歳のソロス氏にとって最も重要な人生の一時期は、1944年から終戦までのナチスの祖国ハンガリー占領と、1947年のイギリス移住であった。(56頁)

彼の父はロシア革命前夜に、ロシア軍の捕虜となりシベリア抑留を経験した。銃殺の前に集団脱走を企てて祖国に生還した父親。

そして哲学者を目指したソロス氏。

この新著の第一部「危機の全体像」の第二章は「私はいかにして哲学者として挫折したか」である。

そして最後の結論で彼はこう書く。

ー「私が本当に読者に伝えたいのは、「人間の存在」について、である。」(引用・244頁)

そして、このように論を締めくくる。

ー「最後に、読者に対するお願いでもって本書を結びたいと思う。本書が、私という一個人による人間理解の試みの「最終章」ではなく、人間理解に向けて、衆知が結集される努力の「序章」であることを、私は切に願う。」(引用・246頁)

戦後の金融界を歩んだ七十八歳の男の心には"青年”が住んでいるのだ。

そしていまだ見えぬ人類の新パラダイムを思ってる。

今年読んだ本の中でも屈指の面白さを、ボクは感じた。

おそらく投資ネタをこの本から得ようとする人が読み落とす部分に、この著作の本物の宝物が隠れてる。

しかしソロス氏も云うように、人間は完全ではないから誤謬をおかすのだ。

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