映画「敵こそ、我が友」
副題に「戦犯クラウス・バルビーの3つの人生」とあるこのドキュメンタリーを観た。
第二次世界大戦のナチス秘密警察(ゲシュタポ)の要職の男が戦後冷戦下のアメリカのスパイ、そして南米で反共活動に従事し50年以上も生き延びる。
ドキュメンタリーでありながら、戦後世界の裏面史をドラマのように辿ることができる。
あらためて、ドキュメンタリーの可能性を思う。
たくさんの人物への取材、記録フィルムを通じて、さまざまな事実のモザイクの蓄積から、勧善懲悪とは違った視点で、歴史と人間の運命について考えさせられた。
この映画はフランス映画だと思うが、このクラウス・バルビーの内面に迫らずに、この冷徹なナチス将校が何を成し、どう行動してきたかの事実とそれを取巻く証言者によって描いた事は、ヨーロッパの知性を感じさせた。
ナチ・ハンターと呼ばれる弁護士が、顔写真で南米に潜伏する別の人生を生きるバルビーを突き止めるあたり、日本人にない執念を感じる。
ひとつひとつの積みかさねが、ひとつの時代と個人をあぶりだしていく手腕は見事だ。
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