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2010年7月 9日 (金)

考える人 村上春樹ロングインタビューを読み終えて

約90ページのロングインタビューを読み進み、幸福な一週間を過すことができた。

ハッセルブラッドで撮られたモノクロームの写真が、とてもいい。

インタビューの舞台となった箱根のホテルの佇まい、明るいモノクロームで表現された新緑、自然体の村上春樹氏の姿が、画集のようだ。

三日に渡るインタビューは、村上春樹氏の信頼する聞き手なくして、形にはならなかったことだろう。

「考える人」編集長・松家仁之(まついえ・まさし)氏は、巻末の編集手帖で、この特集号が書店に並ぶ直前に新潮社を退社することになると明かした。

村上春樹氏との永い交流と深い理解があって、松家氏はこのインタビューを新潮社での最後の“作品”として形に残したのだと思う。

それは村上春樹氏へのひとつの敬愛の表現だ。

人は会話をすることによって、自分がなにを考えていたかを知る。

オートクラインと呼ばれるこの働き。人は話すことで初めて考えをまとめていく。

村上春樹氏からたくさんの言葉を引出したのは、問いを投げかけたこの松家氏の力に依る。

その場にいて、その会話を聴くかのような楽しみを、この梅雨の一週間味わった。

このインタビュー記事を一言で要約するなら、ゴーギャンの最後の大作の題と同じようになると思う。

我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか

Where Do We Come From?  What Are We?  Where Are We Going?

村上春樹氏と私たち同時代の人間が共に抱えていることを、インタビューのゆるやかなドライブ感の中で味わう。

ボクのように文学的興味以上に、表現する人としての村上春樹氏に関心ある者にとって、上質の時間を過ごせる読書となった。

いずれノーベル賞を受賞するであろう村上春樹氏が、この時代にどのように相対して、深い井戸を掘り続けてきたか?また掘り続けようとしているのか?を窺えることが、楽しかった。

ラインマーカーでたくさん線を引いた。

いやなときに走るのが長距離ランナーなんです」(P80 引用)

書きたいときでなくても書くというのは、考えてみれば当たり前のことなんですよ。労働というものはそういうものです」(P100 引用)

そんな言葉が、ボク自身の課題に取組むときの励ましとなって心に響いた。

何度も読み返すインタビュー記事になることだろう。

そして近いうちに舞台となった箱根のホテルを訪れてみよう。

その緑の中で、文字に定着された会話を想像してみよう。

そう決意した。

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