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2010年7月 7日 (水)

考える人 村上春樹ロングインタビューを読みながら

この梅雨時、村上春樹氏のロングインタビューを読み進めるのが楽しい。

降り続く雨には、未来を思い描くよりも過去を思い出させる力がある。

インタビューの中にも出てくる話ですが、村上春樹さんが昔やっていたお店『ピーター・キャット』へ行った日のことを帰りの電車の中で鮮明に思い出した。

早稲田の第一文学部の演劇科の学生であったその頃、早熟の親友がボクを誘ってくれて千駄ヶ谷(神宮?)の『ピーター・キャット』に連れていってくれた。

「風の歌を聴け」や「1973年のピンボール」に流れている風は、どこか乾いていた。

記憶をたぐる。

確か「ピーター・キャット」の店内は、思いの他広かった。

外光が射していたから、昼間だろう。

村上春樹さん(ここから僕の記憶と想像力が編み物のように絡まってしまう)を、確かに確認した、と思う。

学生二人の視線がうっとうしかったのだろうか、「いやな奴らがきたな」といった表情をされたと記憶する。

それが本当の記憶なのか、想像力がその後脚色した偽の記憶なのか、定かでない。

唯一確かなことは、ひとりの女性の存在。その記憶。

数メートルはなれた椅子席に、大人びた女性が座っていた。横には男性が座っていたと思う。

その女性は二十代後半で、髪が長く色白で眼が美しかった。

唯一日常と違う光景であったのは、その眼に涙が流れていたこと。

泣いているのではなく、涙の洪水の後の静かな曇り空のような雰囲気、その佇まいだった。

テーブルには、ワインボトル(あるいはボトルクーラーが)。

その鮮明な記憶が光のように「ピーター・キャット」の店内を照らし出していて、他の記憶を曖昧にしてしまう。

まるでその女性にフォーカスが合っているために、他の記憶がすべてアウト・フォーカスになってしまったように。

大学生のボクには、その光景がとても<村上春樹ワールド>だった。

村上春樹さんの小説を読みながら、この時代を生きてきた。

だから、彼の三日に渡るインタビュー記事は、自分自身の過去を振り返るような感じだ。

だから、雨の日に読むには相応しい。

当時の「ピーター・キャット」に足を運んだ人々は、小説や芸術全般に対し敏感な人々であったのだろう。イノヴェーターの人たち。

もしも、何かの偶然でこのブログの記事に辿り着いて、「ピーター・キャット」の思い出をコメントしてくださったら、とてもうれしいのですが・・・。

●考える人 村上春樹ロングインタビュー

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コメント

「ピーター・キャット」に行った訳ではないのですが・・・

いま村上春樹氏の本を読んでます。。
先日は富士山と湖を眺めながら、爽やかな気分でハーフ完走できました。

木々の香りや水辺の空気に、遠い記憶が細切れにフラッシュバックしながら、、ゆっくり走りました。

目の前の光景が心にやきついて、
その後ふとしたきっかけで鮮明にそれが思い出される事がよくあります。
人間って不思議ですね。

>村上春樹氏の創作の営みに、全く違った分野で生きる自分が励まされる。
>今を生きる、生き方として。

ストイックな感じ、、、好きです。。

投稿: | 2010年7月 7日 (水) 10時35分

minmiさん(・・・ですよね?)

ハーフマラソン、完走おめでとうございます!

今、読んでいる村上春樹氏のインタビューにも「長距離ランナー」という節があって、村上氏の習慣としての走ることに言及する箇所がありますよ(P79)。

最後には、今後のこととして「身体を鍛えることしか考えていないんですよ」(P98引用)とまで云ってます。

より大きな小説を書くために、自分自身が実験室だとも云う村上春樹氏は、やはり自分にとって刺激的です。

毎日の習慣や過し方の中にしか、望むべき未来はないかもしれませんね。

私も、できるだけ遠くまで、行きたいです。もちろん望むべき方角へ。

ハーフを走られたことに、リスペクトです!

投稿: チャーリー | 2010年7月 7日 (水) 12時07分

ごめんなさい。。
またもや名無しになってしまっていました。。

チャーリーさんのように、真面目なランナーではないので~
平日はあまり走れない週末ランナーです。
なのでタイムはとても遅いのです。。

でも走っている時のニュートラルな感じが、なんか好きなのです♪

春樹氏のように頭の中がものすごいスケールとスピードで動いている時と、、、
気持のいいくらい空っぽの時と、、、
そんな切替ができるといいななんて思います。

仕事の合間にこちらに遊びに来るのもそうなのかも~

投稿: minmi | 2010年7月 7日 (水) 16時22分

minmiさん

仕事の合間にエスケープしてくださるなら、大歓迎です!

どしどし、お願いします。

どうして、人はイケナイとされることを聞くとき、うれしくなってしまうのでしょうね。

ここで一つ訂正させてください。

チャーリーは、真面目なランナーではないんです。

2~3年前から、ほぼ毎日走って、たくさんの果実を得てきたので、快楽的ランナーです。

村上春樹氏の二十数年の長距離ランナー作家に比ぶべくもありません。

謙虚にいきます。

投稿: チャーリー | 2010年7月 7日 (水) 19時35分

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