「三島由紀夫の日蝕」(石原慎太郎) 新潮社
古本屋の軒先(のきさき)の棚に、この本を見つけた。
三島由紀夫の評伝を石原慎太郎氏が著すことに興味を覚えた。
次に手にして、小さなエピソードをあとがきで読んだ時、この本を買うことに決めた。
そのエピソードというのは、若き石原氏が福永武彦氏の『草の花』に感動し、ほめたところ、三島氏が顔をしかめたという話である。
十代の頃、福永氏の『草の花』を読んで、ボクは感動した。
三島氏の『潮騒』と『草の花』との知らなかった点と線、全く関連もないと思っていた三作家がこのようにつながる面白さが、この評伝の中にはいくつもある。
昭和の一時代が、石原慎太郎氏の視点を得て、三島由紀夫を巡って語られる興味深さ。
敬愛する同時代者のあの悲劇を解析していく鋭利な作家の洞察力。
様々な文士たち。
今、“文士”はいるのだろうか?
自分もまたその時代を生きてきた。
そして敬老の日に、老いを恐れた三島由紀夫の評伝を読み終えた。
1991年に1150円であった本。
それをボクは100円で買った。
しかし久しぶりに手ごたえある鎮魂の書に巡り合えた。
古本屋の軒先には、そのような出会いが待っている。
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