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2013年2月13日 (水)

黒澤明監督 映画「天国と地獄」

キャリア・カウンセリングの面談の中で、靴職人になりたいという人に、ふと尋ねてみたくなった。

「黒澤明の天国と地獄 という映画を観たことはありますか?」

若いその人は、まだ観ていなかった。

「もしも機会があればご覧になるといいですよ」と勧めた。

「何故 私が勧めたのか、観ればきっとおわかりになると思います」。

主役の三船敏郎 演じる権藤は、靴職人から製靴会社の役員になった人物だった。

黒澤明監督は、クラフツマンシップというものを、見事に権藤に結実させた。

映画を観ていて、黒澤明の無意識が、映画造りそのもののクラフツマンシップを権藤に投影していると感じた。

実際の特急「こだま」を貸切って撮影された身代金を巡る緊迫したシーンは、セットでは描けない臨場感に溢れている。

クラフツマンシップというものの真髄を、その矜恃を持たずして、職人の世界に足を踏み入れることなかれ。

言葉を変えれば、ブロフェッショナルになるためには、毎日毎日、道具を手入れして精進する必要があるのだ。

そのことをボクは黒澤明から教わった。

あの、佐藤勝のギラギラした音楽が忘れ難い。

若き山崎努が、自分をオトコにしてくれた映画だ、と語った。

「天国と地獄」は、この欲望にまみれた人間界のドラマである。

職人は、アルチザンは、それを見事なモノクロームのフィルムで造型したのだ。

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