村上春樹 アンダーグラウンド
1995年3月20日の朝に起きた地下鉄サリン事件。
「アンダーグラウンド」は、村上春樹さんがサリン事件の関係者62人にインタビューを重ね、著した書き下ろしノンフィクションである。
1996年ほぼ一年間をかけインタヴューを行い、村上春樹さんはマッキントッシュ6310を使用してこのノンフィクションをオーガナイズした。
刊行された1997年当時、ボクはハードカヴァーのこの労作を購入し読んでいる。
再読したいと書庫を探したけれど、みつからなかった。村上春樹さんの本を大切にするあまり、どこかにまとめて仕舞ったらしい。
昨日はお休みだったので、平日の街を散歩した。
ふらっと入ったBOOK OFFで、村上春樹さんの書棚をのぞいた。
そこに講談社文庫になった「アンダーグラウンド」があった。
1999年に933円(税別)の「アンダーグラウンド」は、2013年、105円となって、ボクのものになった。
777頁の文庫の厚みは、ペーパーバックのようなパッケージ感だった。
4月12日に村上春樹さんの最新小説がでる。
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」
その小説を読む前に、この「アンダーグラウンド」を読みたかったのは、何故だろう?
この日本のリアリティと向き合った作家の営みを確認しておきたかったからかもしれない。
1995年3月20日、あなたはどうしていたのか?
それを問いたくなる。
生々しい歴史的記憶。
ボクは長男の幼稚園の卒園式に朝出ていた。
それからTokyoのオフィスに向かう予定だった。
早いお昼を自宅で済まそうと帰宅し、ざる蕎麦を食べていた時に、TVのニュースで事件を知った。
当時ボクは霞ヶ関にある官庁を担当していた。
長男の幼稚園の卒園式がなければ、霞ヶ関に向かうために地下鉄に乗っていた可能性もあった。
しかし歴史に、もしもはない。
けれど謎は残った。
あの事件は、ボクにとって、日本にとって何であったのか?
今でもなおひっかかる命題。
村上春樹さんが残した関係者の証言は、今もなお、いや時を経てさらに価値を増し、ボクに迫ってくる。
私たちの日常と、それを脅かす何か。
文字のもつチカラ。
この「アンダーグラウンド」を読み終えて、ボクは、村上さんの最新作に臨もう。
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