断捨離
書庫を借りていた。
いやまだ借りているが、六月には解約する。
五月のGWから週末毎に、断捨離をしてきた。
あまりの量に、最初は不可能なことのように思えた。
毎月の維持費が馬鹿にならないけれど、どこに運搬するか、どこで分別するか、どこで処分するか、そもそもトラックを借りて、自分一人でできるものなのか、様々な難問が横たわっていた。
構想を何ヶ月か温めた。
映画「ショーシャンクの空に」と、アルベール・カミュの「シーシュポスの神話」が、構想の理論的背景にある。
少しずつ、小分けにして、繰り返し繰り返し往復しては試みる。
正確には数えていないが、二十回位になるだろうか。
そもそも大型トラックで運び込んだ量である。
ある日、書庫の向こうの壁の一角が見えてきた。
それからしばらくして壁の全面があらわれた。
次に床があらわれてきた。
昨日は、床を掃くことができた。
本をたくさん売った。
もはや自分が必要としない本だけを手放したから、以前としてかなりの量である。
しかしそれらは、これから必要な本だ。
明け方からの何時間、汗を流した。
朝飯前の仕事だった。
だんだん楽しくなってきた。
生活の新しい構想が湧いてきた。
いらないものを捨てていくのは、新たな幸せが訪れる場を開けておくため。
雨の季節の前には終わる。
いくら運んでも減っていかない一時期が、今では懐かしい。
その一瞬一瞬の五月の朝の光を覚えている。
なんの成果もあがらないようにみえて、何かが変わりつつあった。
ボクの構想通りに。
しかし手に入れたものは、想像を超えたものだった。
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