多崎つくる 村上春樹さんの新刊を
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を再読している。
最初に読み終えた時には、作品の構造であるとか、主人公・多崎つくるの魂の遍歴について客観的に把握できた訳ではなかった。
「1Q83」と違って、この小説を持ち歩けるから、再読しやすいこともある。
とても精緻な工芸品のように、計算し尽くされた語り口、その向こうに36歳の多崎つくるの克服すべき人生の課題が横たわっている。
登場人物もなかなか魅力的だ。
映画化するなら、キャスティングは? そんなことを考えることもまた、楽しい。
恵比寿や銀座や、小説の舞台は、そのままボクたちの生活圏に配置されているのもうれしい。
村上春樹さんの云う《魂のネットワーク》が、ニュースにならなくなった頃に繭のように形成されているだろうか?
現在公開中の新海誠さんの映画「言の葉の庭」は、村上春樹さんの魂のネットワークに連なるシンクロニシティがあると思っている。
雨の朝に。
多崎つくるは、どうしているだろうか?
沙羅とは、どのようになったろうか?
物語の続きを生きる自由を、村上春樹さんは残してくれた。
そこには希望の光が雲海から一条差している。
それに励まされて、今を生きている喜び。
それを思う6月12日、雨の水曜日の朝。
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