映画「トゥ・ザ・ワンダー」 再び
日曜日に観た映画「トゥ・ザ・ワンダー」のことが、頭から離れない。
映画を観終わって、特に感動した訳でもなかった。
確かに比類なき美しさが、この映画にはある。
映像で伝えていこうとするその技法もまた革新的で、美しいプロモーション映像やCMやミュージック映像とギリギリ袂を分かっているのは、宗教的な問いかけが、全編を覆っているからだろう。
それでも映画として、物語として、欠点がある。
ベン・アフレック演じる男は、トリック・スターのようだ。
この映画で、ベン・アフレックの代わりに別の男優が演じても、それはそれで成立しそうだ。
クリスチャン・ベールが演じたら、より官能的で、悲劇的になったろう。
この映画から何を引き算したら、「トゥ・ザ・ワンダー」ではなくなるか?
答えは明らかだ。
オルガ・キュリレンコの美しさ、しなやかさ、その動きが、この映画の総てを支えている。
このウクライナ出身の数ヶ国語を操る女優、パリに住み、二度の離婚を経験した女性に、テレンス・マリック監督のカメラアイは、注がれている。
そうとわかれば、この映画の観方は、簡単だ。
男性ならば、自らがベン・アフレック演じる男性になりきって、オルガとの愛の始まり、愛の別れを追体験する。
女性ならば、自らオルガになりきって、コンテンポラリーな女性の生き方を追体験する。
もう一度、映画館でこの映画を観てみたい。
追体験するには、スクリーンの大きさが必要だ。
ちょうど美術館で絵画や写真を観るように。
まもなく劇場公開は、終わるだろう。
今の日本で、このような映像芸術を支えるマーケットは限られている。
しかし後世、オルガ・キュリレンコというミューズを撮った映画として、この映画は語られるに違いない。
デジタルで、ステディカムで、ただひたすらオルガ・キュリレンコを見詰めた映画。
美しい。
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