『多崎つくる』 新宿駅9・10番線プラットフォーム
村上春樹さんの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。
本当に長いタイトルなので、『多崎つくる』と普段は呼んでいる。
その『多崎つくる』の最終章である19章は、いきなり新宿駅の描写から始まる。
主人公・多崎つくるは、JR新宿駅を眺めるのが好きだ。
大体いつも9・10番線のプラットフォームにあがって、キオスクで紙コップのコーヒーを買い、ベンチに座る。
そこで時を過ごす。
おそらく長い時間を。
多崎つくるは、そこで様々なことを観察するが、同時に内面で様々なことを考える。
まるで自身の内面世界の交通整理をするように。
混乱した世界を秩序だてたい。
秩序だてられた駅のように。
ギネスブックが「世界で最も乗降客の多い駅」と認定した新宿駅。
その新宿駅の谷間のように佇む9・10番線ホーム。
きっと、村上春樹さんは「新宿駅」をリサーチし、その中でこの谷間を発見したのだろう。
その谷間に佇んでみた。
多崎つくるの内面に揺曳した思いを探りながら。
夏の朝が始まる。
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