躓きのない人生 村上春樹さんの多崎つくる君は
『多崎つくる』。
この小説を数回読み返している。
232ページに「躓きのない人生」という言葉が出てくる。
多崎つくるは、自分への他人の評価をそう思う。
興味深い。
人がそのように思うことと、本人がそう思えることとは、天と地程の開きがある。
ボクの場合は?
躓きだらけの人生だ。
躓きだらけの人生。
本当は、誰もが、そうかもしれない。
カウンセリングをしていて、躓いていると思っているクライエントを前にして、誰もが躓いていると思っていますよ、誰もが手遅れだと思っていますよ、といいたくなる時がある。
けれども、あなたは自分の意思で自由に歩き回り、そしてボクの前に座った。
素晴らしいことではないのか、とボクは密かに思う。
ボクは、躓きだらけの人生だ。
けれども、躓く度に、おそらく這い上がってきたのだろう。
だから思う。
躓きだらけの人生でも、いいではないか。
人生の味が味わえますぞ。
涙と共にパンを食べた者でなければ、人生の味はわからない。
そう、ゲーテも云っている。
いや、そんな味は好んで味わう必要はないのだ。
躓きのない人生を過ごして、
無事に、
無事に、
何事もなく、
人生を送りたければ、それもまた人生。
そう、何もない人生。
それがお好みならば。「躓きのない人生」に、ようこそ。
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