仕事を始めて四百日目。
カウンセラーに似ている職業は、何だろう?
思案する。
寿司職人をイメージする。
カウンターを挟んで、旬のネタを供する。
その瞬間の持続こそ、すべて。
お客さんが満足し、また足を運んでくださる。
贔屓のお客さんが、ある時には馬鹿話をしたり、愚痴るかもしれない。
握りながら、控えめに、聞き役に徹するだろうか。
カウンセラーもまた同じ。
真剣勝負。
ネタは、クライエントの人生の転機。
そこには、悔しさがあり、不安があり、そして涙がある。
ボクは職人として、そんな思いに添いながらも、課題を手際良く整理して、これからの指針を提案したりする。
クライエントが経験する一時間は、ボクの過ごした四百日のうちの一時間。
こんな経験はしたことがない、そんな一時間にできるなら。
誰が本気で自分のことを考えてくれるのか?
人は誰もが胸に問う。
あの時、真剣にかかわってきた人のことを、人は忘れていくだろうか。
いや。
そんな経験が一度でもあれば。
人は生きていける。
ボクもまた、そうだった。
そのような経験を一度でもできたなら。
この世は、捨てたものではない。
人の世 だ。
ボクは、そんなことを考える。
この仕事をしていて、無力だ。
それでいいさ。
できることを、するだけだ。
明日、四百日目。
真っさらな思いで、クライエントを迎えよう。
最初のひとりを迎えたあの日のように。
あの日よりは、リラックスしている自分がいる。
ボクの日常なのだ。
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